ディジタルフィルタの伝達関数\(H[z]\)は次式で表されました。
$$H(z) = \frac{Y(z)}{X(z)} = \frac{\sum_{k=0}^{N} b_k z^{-k}}{1 + \sum_{k=1}^{M} a_k z^{-k} }$$
分子部分がFIRフィルタに関係し、分母部分がIIRフィルタに関係します。
FIRフィルタの極と零点
上記の伝達関数を\(H(z) = C(z)/D(z)\)として、\(D(z) = 1\)とおけば次式の式が得られます。
$$H(z) = \sum_{k=0}^{N} b_k z^{-k}$$
この伝達関数は次のように、零点\(z_k\)を用いて表現することができます。
$$H(z) = (1-z_1 z^{-1})(1-z_2 z^{-1})\cdots(1-z_N z^{-1})$$
$$ = \prod_{N}^{k=1}(1-z_k z^{-k})$$
このことからわかるように、FIRフィルタはN個の零点\(z_k\)と\(D(z) = 1\)となる極は全てのkにおいて、\(a_k = 0\)となる場合です。したがって、極はN重の極\(p_k = 0\)を持ちます。
そのため、全零フィルタとも呼ばれます。
IIRフィルタの極と零点
IIRフィルタは
$$H(z) = \frac{Y(z)}{X(z)} = \frac{\sum_{k=0}^{N} b_k z^{-k}}{1 + \sum_{k=1}^{M} a_k z^{-k} }$$
と表されるので、
$$H(z) = \frac{\prod_{k=1}^{N} (1-z_k z^{-1})}{ \prod_{k=1}^{M}(1-p_k z^{-1}) }$$
と表すことができます。したがって、N個の零点\(z_k \)、M個の極\(p_k\)を持ちます。
したがって、
全極フィルタ
IIRフィルタは上記のような式で記述できます。ここで、全零フィルタと同じような考え方で、極点のみのフィルタを考えてみると次式のようになります。
$$H(z) = \frac{b_0}{ \prod_{k=1}^{M}(1-p_k z^{-1}) }$$
このようなフィルタは全極フィルタと呼ばれます。
まとめ
ディジタルフィルタを極点と零点という観点から見ると、3つの分類が可能です。
- 極・零が同時に存在するフィルタ(IIR)
- 全零フィルタ(FIR)
- 全極フィルタ(IIR)
コメント